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「......数学は得意だからたまたまだけど、今回は、それ以外は全然ダメでさ」
吉岡くんが、相変わらずの困った顔で、小さく笑う。
どうせ、悪くても80点以上のくせに......
「吉岡くんのダメレベルは、私にとっては奇跡の点数だよ」
私は、チラリと彼を見ながら、ふぅ、とため息をついた。
「......広瀬がさ」
「え?」
「広瀬が、あんな風に泣くから......気になっちゃって......」
......え......
「......あの......」
急にコンビニでの話題を持ち出された私の胸が、ドクン、と跳ねる。
「えっと、あの時はごめんなさい、急に、あんな......」
「いや、俺が勝手に気になって勉強に集中できなかっただけで......
って、ただの言い訳だよな。変な言い方してごめん」
苦笑いした吉岡くんは、スッと私の答案用紙に目を落とした。
「......」
どうして、吉岡くんが謝るの......
私はこうやっていつも、彼の言葉に、表情に、惑わされてしまう。
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