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帰り際、絵里さんから受け取った灰皿を持ち、私はキッチンに向かった。
以前『吸い殻専用にしてね』と私が買った、冷蔵庫脇の小さなゴミ箱の蓋を開けた私は、思わず愕然とした。
中には、一体何日分なのかわからない程の、2種類のタバコの吸い殻が入っていた。
見慣れた祐ちゃんのタバコと、キラキラの指先が頭に浮かぶ、細いタバコ......
それは、彼の友達の中では、絵里さんしか吸わない。
彼女が私を呼び出した理由が、わかった気がした。
この週末を......いや、週末だけではなく、度々自分が彼の部屋で過ごしている事を、彼女は私に伝えたかったんだ......
今思えば......
電話から祐ちゃんの声が聞こえたのも、わざとだったのかもしれない。
私が一人で家にいるのを知っていたのも、そんな素振りをわざと見せて、彼との親密な関係をアピールしたかったのかもしれない。
彼のキスマークの写真を、私に見せたのも。
わざわざ私に、吸い殻を捨てさせたのも。
きっと彼女は、彼との関係を隠すどころか、私に、その全部を伝えたかったのかもしれない。
今頃、彼の部屋でクスクスと笑っている彼女の姿が、目に浮かんだ。
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