12

7/19
前へ
/1362ページ
次へ
「......行くよ」 突然私の右手を取った吉岡くんが、くるりと背中を向け、足を踏み出す。 少しよろけてしまった私は、しっかりと握られた手に驚きながら、慌てて彼の後ろに続いた。 「......あの、どこに......」 「帰るんだろ?家に」 半歩先を歩く吉岡くんは、振り向く事なく言った。 「......あの、一人で......」 「送る」 「あの、でも......」 足を止め、振り向いた彼に、私もビクリと立ち止まる。 「嫌なら、俺の家に連れてくけど」 「......え?」 「どうすんの」 ......どうすんの、って...... 吉岡くんの、その怒っているような顔と声に、私は、静かに顔を下に向けた。 「......帰る」 「ん」 握った手にギュッと力を入れた吉岡くんが、再び足を踏み出す。 初めて繋がれた、吉岡くんの左手は、すごく温かくて......少し、痛かった。 .
/1362ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1572人が本棚に入れています
本棚に追加