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*** シャワーを浴びてリビングに戻ると、吉岡くんは、ソファーの背もたれに置いた肘に頭を乗せ、ぼんやりとローテーブルを眺めていた。 「......あの」 声を掛けた瞬間、彼の身体がビクッと揺れる。 「あっ、ごめっ......なさい」 「......ビックリした......」 「......」 私は、あまり見た事のない、目をパチクリしている吉岡くんの顔に、思わずプッと吹き出した。 「......なに」 「だって......そんなに驚かなくても......」 笑いながら近付いた私に、ジロリと彼の視線がぶつかる。 「......牛乳、借りた」 「えっ?」 スクッとソファーから立ち上がった吉岡くんは、スタスタとキッチンに向かい、すでに用意されてあった手鍋が乗ったコンロに、カチ、と火を点けた。 「......あの、吉岡く......」 「座ってて」 まるで、自分の家のようにキッチンに立つ吉岡くん。 しばらくすると、おとなしくソファーに座っていた私の目の前に、マグカップに入ったホットミルクが、コトリと置かれた。 .
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