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ふわりと湯気が立つそれは、見ているだけで、冷えた私の心までも温かくしてくれるような気がした。 「ありがとう」 両手でカップを持ち、口を付けると、喉の奥と目頭が、じわりと熱くなる。 「......自分ちの牛乳飲んで泣かない」 「......ん」 慌てて鼻を啜った私に、ふっと笑った吉岡くんは、ソファーに座る私の隣りに、トサッと腰を下ろした。 「......あ、吉岡くんも......」 立ち上がりかけた私の横から、 「あ......俺、牛乳飲めないんだよね」 彼の、意外な言葉が聞こえる。 「......」 弱点、発見...... 涙目のまま、ふふっと笑った私を、吉岡くんは、再びジロリと睨んだ。 「コーヒーは飲める?」 「......うん」 彼の返事を確認し、そのままキッチンに向かう。 私は、牛乳が飲めない、少し照れた顔の吉岡くんの為に、熱いコーヒーを淹れた。 .
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