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吉岡くんは、黙って私の隣りに座っていた。
『何があったの?』なんて、聞かなかった。
広く静かなリビングに、私達が牛乳とコーヒーを啜る音と、小降りになったらしい雨音だけが、静かに響いている。
私は、今までたくさんの嘘をついてしまった吉岡くんに、きちんと話をしようと、マグカップをテーブルに置いた。
小さく深呼吸をする。
「......あの、吉岡くん」
「ん?」
「私......ね?あの......」
「いいよ」
「......え?」
吉岡くんは、マグカップを口に当てながら、真っ直ぐ前を向いたまま、私の言葉を止めた。
「今日は、言わなくていい」
「でも......」
「お前、これ以上泣いたら、明日顔酷いことになるよ?」
吉岡、くん......
話し出せば再び泣いてしまうであろう私を見透かし、気遣ってくれた吉岡くん。
やっぱり吉岡くんは、すごく優し......
「まぁ、今も十分酷いけど」
「......」
......くない。
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