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「......あのさ、広瀬」
「......うん?」
吉岡くんが、飲みかけのコーヒーが入ったマグカップを、静かにテーブルに置く。
「一個だけ、教えて?」
「......うん」
小さく頷くと、
「お前......いつも、一人で家にいるの」
吉岡くんは、前かがみで膝の上に頬杖をつき、相変わらずこちらを見ずに言った。
「......うん」
「......そっか」
吉岡くんは、それしか言わなかった。
誰だって、高校生の私が一人で自宅に住んでいたら、不思議に思うはず。
私は、これ以上彼に心配をかけない為に、正直に話そうと、言葉を続けた。
「あのね......?」
「......うん」
「......うちのパ......お父さんは......」
「パパでいいよ?」
「......」
「パパは......亡くなったんだよね」
「......うん」
家に着き、リビングに入った途端、チラッと奥の仏壇に目を向けた彼は、もう父の事はわかっていて当然だった。
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