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「それでね......?」
「......うん」
「お母さんは......帰って来ないの」
ドキドキした鼓動が、彼に聞こえてしまうのではないかと思った。
「......お母さん、彼氏がいて、半年以上前から、その人と一緒に暮らしてるから......」
「......」
「相手の男の人ね、子供が嫌いで、私とは一緒に住みたくないんだって。私、もう高校生なのにね」
「......」
泣いてしまわないよう、笑顔を作り話す私の隣りで、吉岡くんは、身動き一つせず、黙って私の話を聞いていた。
「お母さんは、私じゃなくて、その人を選んだの」
「......」
「いつも、お金だけポストに届けて、電話すらして来なくて......」
「......」
「携帯の番号も、変えたみたいで......今、どこに住んでるのかも、私、知らなくて......」
泣いたら、ダメだ......
私は、膝の上に置いた拳に、ギュッと力を入れた。
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