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「私ね......?」
必死で笑った。
「私、捨てられちゃったの」
『お前は、捨てられたんだよ』
どこからか......祐ちゃんの声が聞こえた。
「......広瀬」
「あっ、なんかごめんっ、こんな話......」
突然の吉岡くんの声に、焦りながら笑顔を向ける。
「困るよねっ、こんな話っ......」
「捨てられてなんか、ないんじゃないかな」
「......えっ......?」
思わず彼の横顔を見つめた。
「広瀬をこの家に一人きりにしてるのは、絶対に間違ってるけど......
でも、本気で捨てるつもりなら、お金なんて、届けないんじゃないかな」
吉岡くんは、テーブルを見つめながら、何かを考えるような顔で言った。
「......俺は、そう思う。
連絡が取れないのも、何か理由があるのかもしれないし......
お母さん、ちゃんと広瀬の事、愛してくれてるんじゃないかな」
「......」
吉岡くん......
必死で我慢していた涙が、私の膝に、ポタリと落ちる。
吉岡くんは、相変わらずテーブルに目を伏せたまま......私の方なんて、見向きもしないまま......
でも、私が誰かに一番言って欲しかった言葉を......それ以上の言葉を......吉岡くんが、くれた。
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