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時刻は、夜の11時になろうとしていた。
玄関を開けると、雨はだいぶ小降りになっている。
吉岡くんは、紺色の傘を手に、屋根のかかる扉の外に立った。
「広瀬、今日夕飯食べて来たんだよね?」
「......あ、まだ......」
「え、まだ?」
あれ......
「あの、吉岡くんは......」
「俺は、今日バイトだったから」
......そっか。だからあの辺を歩いてたんだ......
え......という事は......
「えっ......もしかして、吉岡くんも夕飯まだなの?」
「うん」
「......」
バカだ......本気でバカだ......
なんで気付かなかったんだろう。
「あのっ、本当にごめんなさいっ」
私は、思いきり頭を下げた。
「謝らなくていいよ、俺は大丈夫だから。広瀬は大丈夫なの?」
「あ......うん、私は平気」
今日は、色んな事がありすぎて、食べられそうにない......
「ちゃんと食べないとダメだよ?」
吉岡くんは、私の心の中を見透かしたかのように、微笑みながら言った。
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