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「じゃあ、また明日」
一歩下がった吉岡くんが、手にしていた大きな傘を広げる。
「あ、うん。こんな時間までごめんなさい」
私は、傘立ての中から、ピンクの傘を手に取った。
「......なにしてんの」
「え?」
突然眉間に皺を寄せた彼を、ポカンと見つめる。
なに、って......
「あの、門の所まで、一緒に......」
「......ダメだよ」
「え、どうして......」
「......風邪引くだろ」
「......引かないよ......」
「ダメだって」
「大丈夫だもん」
「......」
「ホントに大丈夫だから、そこまで......」
そっと彼を見上げると、吉岡くんは、小さくため息をついた。
「......確認しないと不安なんだよ」
「......え?何が......」
「鍵、ちゃんと締めたかどうか」
「......」
さすがに、それは大丈夫だよ、吉岡くん......
私は、じり、と、一歩彼に近付いた。
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