12

17/19
前へ
/1362ページ
次へ
「じゃあ、また明日」 一歩下がった吉岡くんが、手にしていた大きな傘を広げる。 「あ、うん。こんな時間までごめんなさい」 私は、傘立ての中から、ピンクの傘を手に取った。 「......なにしてんの」 「え?」 突然眉間に皺を寄せた彼を、ポカンと見つめる。 なに、って...... 「あの、門の所まで、一緒に......」 「......ダメだよ」 「え、どうして......」 「......風邪引くだろ」 「......引かないよ......」 「ダメだって」 「大丈夫だもん」 「......」 「ホントに大丈夫だから、そこまで......」 そっと彼を見上げると、吉岡くんは、小さくため息をついた。 「......確認しないと不安なんだよ」 「......え?何が......」 「鍵、ちゃんと締めたかどうか」 「......」 さすがに、それは大丈夫だよ、吉岡くん...... 私は、じり、と、一歩彼に近付いた。 .
/1362ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1572人が本棚に入れています
本棚に追加