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......もう、行ったよね......
少しだけ扉を開け、こっそり外を覗いた瞬間、
「......っ!」
ビクッと手を震わせた私は、咄嗟に扉の中に顔を隠した。
門の側の街灯の下で立ち止まり、ジロリとこちらを睨んでいる吉岡くんと、目が合ってしまった。
な、なんで、バレたのかな。
恐る恐るもう一度覗くと、怖い顔の吉岡くんが、顎をクイッと動かし、私に、中に戻るようにと合図をする。
私は慌ててコクコクと頷き、玄関の扉をパタンと閉めた。
しっかりと鍵を締めてから、サンダルを脱ぎ捨て、2階の自室に駆け上がる。
窓際に向かい、そっと部屋のカーテンを開けると、道路に立ち並ぶ街灯に照らされた、吉岡くんの後ろ姿が見えた。
ここなら、絶対バレないはず......
私は、そのカーテンの隙間から、吉岡くんの大きな傘が、小さく小さくなって......見えなくなるまで、こっそり彼を見送った。
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