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吉岡くんと、初めて一緒に下校した、4日前のあの日。
夏を前にしたこの時期に、連日のように降り続く雨の中を、私達は、ピンクと紺色の、二つの傘を並べて歩いた。
手は......繋がなかった。
吉岡くんの右手は傘を持ち、左手は、斜めがけした鞄の長い持ち手を押さえていた。
私は、彼より小ぶりの通学用鞄を肩にかけ、右手が彼の手を求めてしまわないように......両手でしっかりと傘の柄を握っていた。
帰宅途中の分かれ道。
『いつも一人で帰ってるし、ホントに大丈夫だよ』
何度も言った私に、
『ダメだよ。女の子がこんな時間に一人で外歩いたら危ないだろ?』
吉岡くんは、いつも真夜中に祐ちゃんの家から一人で帰宅している私を、自宅の玄関前まで送ってくれた。
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