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「......なんでそんだけなんだよ」
床に胡座をかいていた祐ちゃんが、私が持っているスーパーの袋を見て言った。
......もう、飲んでたんだ......
テーブルの上には、すでに潰された缶が、2本転がっている。
「聞いてんだろーが」
「あっ、あの......私、今日は、祐ちゃんに、ちゃんと酔わないで、話聞いて欲しくて......」
ドキドキしながら声を振り絞った私に、
「......ざけんなよ」
舌打ちをした祐ちゃんは、立ち尽くす私の手から、バサッ、と袋を奪い取った。
アパートに来る前、
『いつもの量、買って行った方がいいのかな......』
『でも、もう彼の為にお金を使うのは......』
葛藤した挙げ句、手ぶらで来たら話すら聞いてもらえないと思った私は、スーパーに寄り、いつもの缶ビールを、2本だけ買って来たのだった。
「マジ使えねぇな、お前」
「......」
イライラしている祐ちゃんを前に、私は、結局手ぶらで来ても同じ反応だったのではないかと、中途半端な行動を取ってしまった情けない自分を後悔した。
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