5/11

1572人が本棚に入れています
本棚に追加
/1362ページ
ふと横を見ると、先生に指名された石田くん達が、順に書き終え席に戻っていく。 一人取り残された私は、背中に感じるクラス中の視線から早く逃れようと、急いで黒板に数字と記号の羅列を書き写した。 「あの、ありがとう」 席に戻り、吉岡くんの机の上にこっそりプリントを置くと、彼は少し微笑んで「うん」と、自分の前にプリントを引き寄せた。 この一週間、彼の隣りで過ごしてきた私は、授業中も、休み時間も、それなりに彼の姿を見てきた。 細長い手足に、白い肌。 少しだけ茶色い髪と、同じ色の瞳。 口数は少ないけれど、たまに聞こえる穏やかな声。 大人びて見える横顔から、たまに見える優しそうな笑顔。 女の子にモテそうだな、という印象の彼。 吉岡くんの彼女は、幸せいっぱいなんだろうな...... 私は、隣りに座りながら、ぼんやりと彼の姿を眺めた。 .
/1362ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1572人が本棚に入れています
本棚に追加