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ふと横を見ると、先生に指名された石田くん達が、順に書き終え席に戻っていく。
一人取り残された私は、背中に感じるクラス中の視線から早く逃れようと、急いで黒板に数字と記号の羅列を書き写した。
「あの、ありがとう」
席に戻り、吉岡くんの机の上にこっそりプリントを置くと、彼は少し微笑んで「うん」と、自分の前にプリントを引き寄せた。
この一週間、彼の隣りで過ごしてきた私は、授業中も、休み時間も、それなりに彼の姿を見てきた。
細長い手足に、白い肌。
少しだけ茶色い髪と、同じ色の瞳。
口数は少ないけれど、たまに聞こえる穏やかな声。
大人びて見える横顔から、たまに見える優しそうな笑顔。
女の子にモテそうだな、という印象の彼。
吉岡くんの彼女は、幸せいっぱいなんだろうな......
私は、隣りに座りながら、ぼんやりと彼の姿を眺めた。
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