1572人が本棚に入れています
本棚に追加
「つーか何泣いてんだよ。お前だって俺とヤんの嫌いじゃねぇだろーが」
「......めて......」
「つーかむしろ好きなんだろ?」
「......やめて......」
聞きたくなかった。
「なんなら今からヤってやろーか?」
「......」
ニヤニヤと笑いながら話を続ける彼に、出会って以来、初めて怒りの感情を覚える。
「......信じられない......」
「あ?」
「......最低......」
私の口からは、無意識に言葉が出ていた。
「こんな時に、何言ってるの......?なんでそんな事言えるの......?
祐ちゃんなんか......祐ちゃんなんか、最低っ......!信じられなっ......」
突然ガンッ!という音がし、私の身体が、ビクッ、と震える。
......えっ......
目の前を、何かが横切った。
ゆっくり音がした方に目をやると、転がった缶からドクドクと中身が溢れ......カーペットに、濃い染みを作っていく。
祐ちゃんが......テレビに向かって、ビールの缶を投げ付けたのだと気付いた。
「てめぇ、いつからそんな口きけるよーになったんだよ」
固まっていた私の耳に、彼の、低く冷たい声と、この場を嘲笑うかのような、テレビからの声が響いた。
.
最初のコメントを投稿しよう!