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「あ、の......」
「......」
そろりと手を下ろした私を、無言になった吉岡くんが、ジッと見つめる。
私は、彼の視線から逃れるように、顔を下に向けた。
私が、一人で家にいるのを知ってるから......
風邪を引いても、誰も看病してくれる人がいない事を知ってるから......
だから吉岡くんは、こんなにも心配してくれるんだよね......
ものすごく申し訳ない気持ちでいっぱいになった私は、
「あの......嘘なの」
怒られるのを覚悟で、正直に言った。
「ホントは、風邪なんて、引いてなくて......」
「......」
「......ごめんなさい......」
「......」
「......」
「......広瀬」
「......はい」
彼の隣りで、キュッと唇を噛み締める。
「俺......わかってたよ?」
「......えっ?」
ポカンと顔を上げると、吉岡くんは、いつもの涼しい顔で、机に頬杖をついていた。
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