16

10/20
前へ
/1362ページ
次へ
「広瀬」 再び聞こえた声に、チラリと顔を上げる。 目線の先の吉岡くんは、怒ってなんかいなくて......むしろ......少しだけ困ったように、微笑んでいた。 「......俺には、言いたくない?」 「あ......違......」 胸が......張り裂けそうだった。 悲しそうに......寂しそうに微笑んでいる彼が...... 私のせいで、そんな顔をしている彼が...... 私はなんだか、耐えられなかった。   「吉岡くん......」 気付けば、口を開いていた。 「......うん?」 「私......ね?」 「......うん」 心配かけてしまうけど、ごめんなさい...... 「私......ダメだったの」 「......え?」 がっかりさせてしまうけど、ごめんなさい...... 期待に応えられなくて、ごめんなさい...... 「私......」 本当に、ごめんなさい......   「私......彼と別れてもらえなかったの......」 いつの間にかざわめいていたクラスの中に、予鈴のチャイムの音が、鳴り響いた。 .
/1362ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1572人が本棚に入れています
本棚に追加