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「広瀬」
再び聞こえた声に、チラリと顔を上げる。
目線の先の吉岡くんは、怒ってなんかいなくて......むしろ......少しだけ困ったように、微笑んでいた。
「......俺には、言いたくない?」
「あ......違......」
胸が......張り裂けそうだった。
悲しそうに......寂しそうに微笑んでいる彼が......
私のせいで、そんな顔をしている彼が......
私はなんだか、耐えられなかった。
「吉岡くん......」
気付けば、口を開いていた。
「......うん?」
「私......ね?」
「......うん」
心配かけてしまうけど、ごめんなさい......
「私......ダメだったの」
「......え?」
がっかりさせてしまうけど、ごめんなさい......
期待に応えられなくて、ごめんなさい......
「私......」
本当に、ごめんなさい......
「私......彼と別れてもらえなかったの......」
いつの間にかざわめいていたクラスの中に、予鈴のチャイムの音が、鳴り響いた。
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