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「......痛い?」
彼の問いかけに、私は、フルフルと首を横に振った。
瞳を揺るがせた吉岡くんが、私が捲っていたブラウスの袖口を、そっと元に戻す。
私は、ブラウスの上から、片手で自分の右肘を押さえた。
「あの、こんな事になっちゃって、本当にごめんなさい」
彼の、戸惑いを含むような表情に、思わず小さく頭を下げる。
「......なんで広瀬が謝るの......」
困ったように言った吉岡くんは、そのまま、静かに床に目を落とした。
放課後のクラスの中。
私達は、二人きりで、向かい合って座っていた。
期末テストを控え、部活動は休みの期間に入っている。
静か過ぎる校内と、目の前で俯く彼の姿が、私の緊張と切なさを、より高めた。
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