1572人が本棚に入れています
本棚に追加
握った両手に力を入れ、真っ直ぐに彼を見つめる。
「......俺、間違ってないかな」
「......えっ?」
「こんな......あの人から逃げるような方法しか思いつかなくて......
俺、間違ってないかな......」
「......」
え......吉岡、くん......
私は、急に自信なさ気に変わった彼に、思わずふふっと笑いをこぼした。
「......なに。なんで笑うの」
「だって、吉岡くんが言ったんじゃない、そうしろ、って」
「......」
ジロリとこちらを睨んでいる彼の隣りで、
「嘘だよ?......ありがとう、吉岡くん」
今にも込み上げて来そうな涙を堪えながら、にこりと彼に笑顔を返す。
「私の事、一生懸命心配してくれて......私の為に、一生懸命考えてくれて、ありがとう」
間違ってたっていい。
もしそうでも、吉岡くんのせいじゃない。私がそうするって決めたんだ。
「本当に、ありがとう、吉岡くん」
私は、真剣に私の事を考えてくれている彼の気持ちが......彼の姿が......
ただ、単純に、心から嬉しかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!