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彼女の手が、あの細いタバコに火を点ける。
相変わらず、キラキラの爪が、様になっていた。
一瞬目を奪われてしまいながら、
なんで、私......
こんな今でも、彼女の指先に見惚れてしまった自分に悔しくなりながら、慌てて視線を逸らす。
いつものように、静かに煙を吐き出した彼女は、不意に私の顔を覗き込んだ。
「尚ちゃん、もしかして、寝不足?」
「......え?」
「目の下にクマできてるわよ?」
「......」
「何か眠れない理由でもあるの?」
「......」
それも、嫌みなんだよね......
「明日から期末テストなので、夜中まで勉強してるんです」
弱みを見せないよう、毅然とした態度で答えた私に、
「そう、大変なのね」
絵里さんは、余裕の表情で、クスッと笑った。
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