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絵里さんの前に、アイスコーヒーが運ばれる。
「ありがとう」と店員に笑顔を見せた彼女は、そのままグラスを横にずらし、タバコを吸い続けた。
「......」
「......」
何も話さない彼女と私の間に、不自然な沈黙が流れる。
どうして、黙ってるんだろう......
というか、私から先に聞いてもいいのかな......
長居したくなかった私は、アイスティーを一口飲んだ後、思い切って口を開いた。
「あの......もう祐ちゃんから、全部聞いてますよね?」
「......えぇ、聞いてるわよ?」
絵里さんは、あっさりと言った。
「じゃあ......私から、質問してもいいですか?」
「どうぞ?」
「......あの、絵里さんは......いつから祐ちゃんと付き合ってたんですか?」
まずは、一番聞きたかった質問を投げかける。
私は、いつから彼女に騙されていたんだろうか。
私に優しくしてくれていたのも、私に微笑んでくれていたのも、全部全部、嘘だったのだろうか。
自分から聞いておきながら、バクバクと心臓を跳ね上がらせていた私に、
「そうね......正確には、尚ちゃんに初めて電話した日、かしら」
彼女は、焦る様子もなく、平然と答えた。
彼女が私に、初めて電話した日。
それは......
『今、彼、シャワー浴びてるの』
彼女からの電話の向こうで、祐ちゃんの声が聞こえた日だった。
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