1573人が本棚に入れています
本棚に追加
「何度も浮気されては、その度に喧嘩して......でも、結局はいつも、別れずに付き合っていく、っていう道を選んでたんだけど......
でもね?尚ちゃんの時だけ、私、祐也と別れたの」
「え......」
チラリと顔を上げると、
「どうしてかわかる?」
絵里さんは、私を見つめ、少しだけ微笑んでいた。
どうして、って......
「えっと......何回も、浮気、されたから......」
「......」
「だから、いい加減祐ちゃんの事が、嫌になった......とか、ですか?」
それ以外の答えが浮かばなかった私に、
「違うわよ。ホント尚ちゃん、頭悪くて嫌になっちゃう」
絵里さんは、再び呆れたように言った。
彼女の視線が、静かにテーブルへと落ちる。
「......初めてだったのよ......」
「......あの、何が......」
「......初めて、祐也の方から、言われたの。『別れてくれ』って」
「......えっ?」
「浮気して喧嘩する度に、誤魔化したり、もう二度としない、って言って、私と別れようとしなかったあの人が......尚ちゃんの時だけ、初めて自分からそう言ったの」
「......」
俯く絵里さんの目が、潤んでいるように見えて......私は、どうすれば良いのかわからないまま、キュッと唇を噛んだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!