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こんな時......なんて言えばいいんだろう......
私が、謝るべきなんだろうか......
息を潜めるようにしながら、自分の膝を見つめ続ける。
「1週間前から付き合ってる女がいるから、別れてくれ、って言われた時は......正直、ビックリしたのよね。
浮気も二股もいつもの事だったけど、今までは、それを隠そうとしてたくせに......なんで今回は、正直に言うの?って」
「......」
「でも、すぐにわかったの。祐也にとって、今回は、浮気じゃなくて、本気なのね、って。
それに気付いた瞬間、急に悔しくなっちゃって......私、カッとなって、その場で言ってやったの。やっと別れてくれるのね、せいせいするわ、って」
絵里さんは、3本目のタバコを取り出すと、ライターに手をかけた。
「で、別れてしばらく経ってから、祐也が付き合ってる相手が高校生だ、って友達伝いに聞いて......私、ますます悔しくなっちゃって。私、高校生に負けたの?って。
それが......尚ちゃんよ?」
タバコに火を点けた彼女が、白い煙を、真っ直ぐに私の方へ吐き出す。
私は、煙に身を包まれながら、黙って俯いた。
「祐也はあんな性格だから、別れた後も、私に普通に声かけて来てたのよね、友達みたいに。
だからその話を聞いてすぐ、飲み会に参加する振りして、祐也の家に 、久しぶりに行ったの。彼女もよく来てるって聞いてたから、一度見てみようと思って」
「......」
「初めて尚ちゃん見た時、ビックリしたわ?単なる普通の高校生じゃない、って。なんでこんな子のせいで、私が振られなきゃいけなかったのよ、って、本気で思ったのよ?あの時」
「......」
淡々と話す絵里さんを前に、私は、何も言い返す事が出来なかった。
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