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あれは、卒園を間近に控えた、2月の誕生会だった。
その月に誕生日を迎える園児達の親が幼稚園に招かれ、私は、父と母が来てくれた事がとても嬉しかった。
「ちょっと母さん、これって何色のペンで書けばいいの?」
「なんでもいいから早くしてよパパ!もう誕生会始まっちゃうわよ!?」
母に急かされ、数種類の中から黒いペンを取り、
「もう、書く事決めて来たんだよね」
嬉しそうにペンを走らせる父。
......と、隣りで覗き込んでいた母が、慌てて声をかけた。
「ちょっとパパ!こういうのは平仮名で書かないと尚が読めないじゃない!」
「えっ!?......あっ!どうしよう、母さん!」
「......もぅ、パパったら......」
「ごめんごめん、というか、さすが元幼稚園の先生!よく気付くねー!」
一瞬オロオロしつつも、すぐに母を持ち上げる父。
そんな父を呆れたように眺めながらも、こっそり私の顔を覗き込んで、クスクス笑う母。
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