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突然やって来て、突然家に上がり込んだ彼に、私の頭が真っ白になる。 というか、鍵...... 頭に手を当て記憶を辿っても、昨夜祐ちゃんが帰った後、玄関の鍵を締めた記憶はなかった。 携帯を持ったまま、ベットの上で固まる私の耳に、階段を登る足音が聞こえる。 えっ、ちょっ...... 私は咄嗟に電話を切り、頭から布団をかぶった。 どんどん近付いた足音が、カチャッという部屋のドアが開く音と共に止まる。 「......広瀬......」 すぐそこから聞こえた吉岡くんの声は、やはり少し、切なげだった。 なんで......そんな声なの? どうして、来たの......? 何がなんだかわからず耳を澄ましていると、再びゆっくりと近付く足音と、カサカサというビニールのような音が聞こえる。 私のベット脇で止まった吉岡くんは、床に腰を下ろしたようだった。 「......広瀬......出て来て」 「......」 「広瀬......」 「......」 出れないよ...... 息を潜めていると、 「まさか......寝た振り......?」 「......」 彼の声に、私は布団の中で、目をぱちくりさせた。 寝た振りじゃ......ないけど。 慌てて隠れ、無言を貫く自分の行動が、寝た振りをしているのに変わりない事に気付かされた私は、 「......起きてる......」 なぜ隠れてしまったのだろうと、自問自答しながら、もぞもぞと頭を出した。 布団を握り引き下げる手を、目の下ギリギリで止めて、頬を隠す。 視線の先に見えたのは、悲しそうな、苦しそうな顔をして横に座っていた吉岡くんだった。 .
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