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やだ......言えない。
絶対、言えないよ......
布団の中で、ギュッと唇を噛み締め、口を閉ざす。
黙って彼を見上げていると、
「頼むから......本当の事教えて?」
吉岡くんは不意に茶色い瞳を揺るがせた。
私の胸が、ドクンと音を立てる。
だって......
だって、吉岡くんが心配してた通りになっちゃったんだもん。
私が危ない目に合わないようにって、一生懸命心配してくれてた吉岡くんを裏切るみたいに、私、またケガしちゃったんだもん。
偉そうに『鍵開けないから大丈夫』なんて言いながら、私、鍵開けちゃったんだもん。
『ホントに大丈夫』なんて言いながら、私、全然大丈夫じゃなかったんだもん。
私が、彼氏である祐ちゃんの行動を予想できなかったせいで......
私が、祐ちゃんを説得できなかったせいで......
私が、弱かったせいで......
私のせいで......
きっと吉岡くんはまた、今以上に悲しい顔をする。
だから、言えない......
お願いだから、吉岡くん......
お願いだから、今回だけは、私に騙されて......
押し黙り、彼を見つめて訴える私の両目から、こめかみに涙が伝った。
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