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  次々溢れる涙が、枕に染み込んでいく。 泣いたら、吉岡くんますます心配するのに...... 泣いたら、何かあったってバレちゃうのに...... わかっているのに、私はその涙を止める事ができなかった。 そんな私を間近で見ているはずの吉岡くんは、 「朝......お前電話に出なかっただろ?」 私の姿に触れず、いきなり話を変えた。 「相澤に聞いたら大丈夫らしいっては言われたんだけど......でもやっぱり気になって......学校帰りにそのままここに来たんだ」 私の家に来た経緯を説明し出した吉岡くん。 私は、黙って彼の言葉に耳を傾けた。 「家の前まで来たらさ......表に何本もタバコの吸い殻落ちてて」 「えっ......」 ハッとし、思わず声を上げてしまう。 吉岡くんは、そんな私を気にする事なく、 「俺、一瞬頭が真っ白になって、思わず玄関の扉、勝手に引いちゃってさ」 少し困ったような顔で微笑んだ。 「......そしたら、家の中にも吸い殻落ちてるし、廊下にサンダル転がってるし......俺、それ見た時焦って......広瀬が連れ去られたんじゃないかって、本気で一瞬思っちゃって」 胸の奥が苦しくなる。 「......でも、ちゃんと家にいるのわかって、この部屋に入った瞬間......気が抜けたみたいに、ものすごく安心した」 「......」 私は吉岡くんに、どれだけ心配をかけたんだろう。 玄関先の光景を目にした吉岡くんを、どれだけ不安にさせたんだろう。 私はすでに、涙を堪える事さえ忘れていた。 .
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