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「けどさ、広瀬」 霞んだ視界で彼を見つめる私に、 「......何もなかったわけじゃ......ないよな?」 吉岡くんは、穏やかな声で言った。 「風邪なんかで休んだんじゃないよな?」 「......」 「何か......辛い事、あったんだよな?」 「......」 でも私...... 顔、見せられない...... きっと吉岡くん、ビックリしちゃう...... 彼の優しい口調に、今にも泣き声が漏れてしまいそうで、きつく唇を噛んだ。 ボロボロと涙を流す私に向かって、吉岡くんが静かに手を伸ばす。 彼の手は、そのまま私の頭にそっと触れた。 「お前さ......頑張りすぎ」 「......」 「一人で抱え込んで、一人で苦しむの......もう、おしまい」 「......」 私の頭に手を当て、なだめるように話す彼。 吉岡くんは小さく微笑み、 「ちゃんと頼ってくれないと......俺、寂しいよ......?」 悲しそうに、目を細めた。 私は......もう耐えきれなかった。 胸が張り裂けそうになり、布団をバッと引き上げる。   「......めっ......なさっ......」 嗚咽が止まらなかった。 「ごめっ......なさ......」 私は、何度も心配し、何度も助けてくれた彼の気持ちを、この期に及んで何もわかっていなかった。 いつも、してもらうだけで、何も返そうとしていなかった。 「......ントにっ......ごめ......なさっ......」 同じ言葉を繰り返す事しかできず、布団の中で泣きじゃくる私の頭を......吉岡くんの手の平が、ポンポン、と優しく撫でた。 .
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