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吉岡くんが階段を登る足音が聞こえ、ぼんやりと椅子に座っていた私は、慌ててベットに潜り込んだ。
部屋の扉が開くと、お盆を抱えた吉岡くんが、ふっと微笑む。
「......なに?」
ベットの中に横たわり、澄ました顔で聞いた私に、吉岡くんは、
「寝てなかっただろ」
片手で扉を閉めながら言った。
......なんで、わかるのかな。
不思議に思いながら彼を見つめていると、吉岡くんが、お盆を勉強机にカタリと置く。
「俺、天才かも」
振り向いた吉岡くんは、私に向かってにっこり微笑んだ。
お粥、上手にできたんだ......
稀に聞く吉岡くんの発言に、きっと私を笑顔にさせる為の言葉だとわかってしまう。
私は頬を緩ませベットから起き上がった。
「食べてもいい?」
「......うん」
なんだか急に照れた顔の吉岡くん。
私は、ますます緩んでしまいそうな顔をきゅっと引き締め、椅子に座った。
小さな土鍋の蓋を開けた途端、ふわふわと湯気が立ち上がり、次第に見えたものに、私は思わず目を丸くした。
それは、料理が苦手な彼が作ったとは思えない、ふっくらと柔らかそうなお粥だった。
その上には、キレイ色のふんわり卵までサービスされている。
美味しそう......
朝から何も食べていなかった私は、急に空腹感を覚え、思わずゴクリと喉を鳴らした。
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