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ジッとお粥を見つめる私に、
「冷めないうちに食べなよ」
吉岡くんが、ポンと私の頭を撫で、机の脇から離れる。
「......うん」
私は、今日何度も触れられるその手の平に、少し恥ずかしくなりながら、愛情たっぷりのお粥を口に運んだ。
吉岡くんが、そのままギシッと私のベットに腰を下ろす。
「どう?味」
「うん、すごく美味しい」
「ホント?」
「うん。ホント吉岡くん、天才だと思う」
モゴモゴしながら身体ごと振り向くと、彼は一瞬目をぱちくりさせた後、ふっとその目を細めた。
私の胸が、トクンと動く。
どうして......
どうして吉岡くんは、私にそんな笑顔を向けてくれるんだろう。
どうして吉岡くんは、こんなに優しいんだろう。
こんなバカな私に呆れる事なく、いつも助けてくれる。
今日だって......
こんな風に、彼に傷の手当てをしてもらったり、お粥を作ってもらったりする資格なんて、私にはないのに。
あんなに心配してくれてた吉岡くんを、裏切るような真似しちゃったのに......
私は、彼を真っ直ぐ見つめる事ができなくなり、
「吉岡くん......」
目線を落とし、口を開いた。
「ん?」
「いつも迷惑かけて、ごめんなさい」
「......」
「私、ホントは心配かけないようにしたいのに......バカだから、いつも吉岡くんに心配かけて、迷惑かけて、こんな風に優しくまでしてもらって......」
温かかった胸が、どんどん苦しくなってくる。
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