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「私、吉岡くんに甘えてばっかりで、お礼なんて何一つしてないのに......吉岡くんいつも私のこと気にかけてくれて、助けてくれて......」
「......」
「今日だって、私のせいで、何も関係ない吉岡くんに迷惑かけて......本当に、ごめ......」
「やめろよ」
低い声に遮られ、ビクリと目線を上げた。
吉岡くんは、今までに見た事がないような怖い顔をして、ジッと私を見つめていた。
「あの......」
「それ以上言うなら怒るよ」
「......」
なんで、怒るの......
なんで、そんな怖い顔......
みるみる顔が下を向いた私に、
「いいから早く食べろって」
吉岡くんの苛立った声が聞こえる。
私は、初めて感じる彼の怒りから逃れるように、くるりと背中を向けた。
スプーンを持ち、お粥を食べ始める。
なんで......
謝った、だけなのに......
目の前のお粥がどんどん霞んで見えなくなり、グイッと涙を拭う。
「広瀬」
背中から聞こえる彼の声。
「お前さ、たまたま同じクラスになって、たまたま隣りの席になったからって理由だけで、俺がお前のこと気にかけてるとでも思ってるの」
「......」
「それとも、たまたまお前が一人で家に住んでる事知って......たまたま彼氏ともうまくいってない事知って......だから俺が、お前に同情してるだけだとか思ってるの」
「......そうじゃ、ないけど......」
震える声を絞り出した私に、
「じゃあなんで関係ないとか言うの。何も関係ないのに迷惑かけて、ってなに」
吉岡くんが、どんどん強まる口調で言う。
だって......
だって私......
私は、そっとスプーンを置いた。
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