1573人が本棚に入れています
本棚に追加
「だって......私、吉岡くんに悪いなって思ったから......だから謝りたかっただけなのに、どうして怒るの?」
彼に背中を向けたまま訴えた。
「吉岡くんが、同情なんかじゃなくて、心から私を心配してくれてるのは、わかってるよ。本気で心配してくれてるの、ちゃんとわかってるよ」
声に力が入り、パジャマの裾をギュッと握る。
私の手の甲に、ポタリと涙が落ちた。
「でも......実際、関係ない事でいつも悩ませちゃってるのは事実じゃない。私のせいで、関係ない吉岡くんに迷惑かけてるじゃない。
なのに、吉岡くん優しいから、いつも私を責めないし、助けてくれるから......だから、申し訳ないなって思って謝りたかっただけなのに......」
なのに、どうして怒るの......
なんでそんな怖い顔するの......
涙声で喋り続ける私の後ろから、ギシリと彼が立ち上がる音が聞こえる。
さっきの彼の苛立つ口調が過ぎり、咄嗟に身体を強張らせた瞬間。
私の身体が、ふわりと包み込まれた。
えっ......
な、なに......
俯く視線の先に、吉岡くんの両腕が見える。
何が起こったのかと、頭が真っ白になっていた私の耳元で、
「......ごめん」
吉岡くんが、悲しそうに呟いた。
「あ......の......吉岡く......」
なぜか吉岡くんに、後ろから抱きしめられながら、思わず口を開く。
「八つ当たりして......泣かせてごめん」
「......え......?」
「俺、広瀬に自分の気持ちちゃんと伝えてないのに......関係ないって言われた事にイラっとしちゃって......怒ってごめん」
えっと......
意味がわからないまま、放心していた私の耳に、
「......ホントに俺......最低だ......」
吉岡くんの、ため息混じりの声が聞こえた。
.
最初のコメントを投稿しよう!