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HRまで、あと10分を切った時。 私の制服のポケットが、ブルブルッ、と突然震えた。 ドキリとしながらも、中に手を入れ、携帯の画面をそっと確認する。 見えた文字は、予想通り、 『着信  川原 祐也』 だった。 「どしたー?尚」 「あ、ちょっと......ごめんっ」 振動に急かされながら、ガタン、と慌てて席を立つ。 長い廊下を小走りで進んだ私は、屋上へと続く階段を上りながら、急いで通話ボタンを押した。 「ごめん祐ちゃんっ......」 『おっせーよ、早く出ろよお前』 「......ごめん、もう、学校に着いてて......」 両手で携帯を握りながら、慌てて弁解する。 『今日の夜、うちに友達2人くっから。うち来て飯作れよ』 「......えっ?」 私は、息を切らしながら、混乱していた頭を必死で落ち着けようとした。 『7時までに来いよ?』 「......あのっ、何を......」 『あ?なんだよ』 「......」 彼の、低く冷たい声が、私にそれ以上を言わせない。 「......うん......わかっ......」 言い終わる前に、私の耳元に、プツッ......という、切ない音が響いた。 .
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