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「......嘘だよ」
「へっ?」
机の中をまさぐっていた私の手が、ピタッと止まる。
「う、嘘、って......」
「いや......広瀬の様子がおかしかったからさ......もしかして、彼氏の話、したくないのかな、って」
「......」
一瞬、クラスのざわめきが静まったような気がした。
......どうして......吉岡くん......
私の胸の奥が、キュッと詰まる。
吉岡くんの目は、いつものように、私をからかう目じゃない......
その、柔らかな茶色の瞳は、優しさでいっぱいに見えた。
「勘違いだったら、ごめん」
吉岡くんが、困ったように、小さく微笑む。
そんな彼の隣りで、私は『ありがとう』の代わりに、下に向けた顔を、ただ横に振る事しかできなかった。
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