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制服姿ではないにしろ、明らかに未成年の私に、黙ってお酒を売ってくれる店がなくなってしまうのは、やはり痛い。
......これから、どうしよう......
ぼんやりと考えながら、レジに表示された金額を確認し、財布からお金を取り出した時。
「ところで今日は、カレーかい?」
......へ?
おじさんの目線を辿ると、私が肩に下げていたオレンジ色のナイロン製エコバックから、テレビコマーシャルでお馴染みのカレールウが、しっかりと透けているのが見えた。
「......あっ、す、すみませんっ、スーパーの方が、ちょっと、安く、て......」
みるみる顔を下に向けながら、チラリとおじさんを覗く。
「いいよいいよ。将来、いい奥さんになれるよ?」
出入り口に向かって「いらっしゃいませ」と言ったおじさんは、顔をくしゃっとさせながら笑った。
「でも、お酒もスーパーの方が安いんじゃないかい?」
「あ、はい、でも......」
スーパーだと売ってもらえないかもしれないし......祐ちゃんの家まで遠いから、持ち歩くの、重いんだよな......
返事に困っていた私に、
「まぁ、商売人がこんな事言っちゃいけないね」
おじさんは、今度は寂しそうに笑った。
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