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「マジうまいっ!尚ちゃん、やればできんじゃん!」
「本当、尚ちゃんって、お料理上手なのね」
私が作ったなんでもないカレーを、祐ちゃんの男友達と絵里さんは、二人揃って大袈裟に褒めた。
「尚ちゃん、よくお家でもお料理するの?」
「......え?っと......」
思わずチラッと彼に目を向ける。
祐ちゃんは、いつもながら無表情のまま、カレーを食べ続けていた。
「......あ、たまに......」
無難な答えを返した私に、絵里さんが、
「そう、偉いのね。まだ高校生なのに」
いつもの笑顔で、再びスプーンを口に運ぶ。
「いえ......」
だって、私には、作ってくれるお母さんがいないし......
私は、頭に浮かんだ母の顔を打ち消しながら、そっとスプーンを手に取った。
今朝の祐ちゃんからの電話で、何を作れば良いのか聞けなかった私は、以前彼がおいしいと言ってくれた、カレーを作った。
お肉と野菜以外は、チーズを乗せただけの、何の変哲もないカレー。
『尚の作ったカレー、超俺好み。あ、チーズ大盛な?』
私は、無言で食べ続ける彼の横顔を見ながら、ぼんやりと、優しかった頃の彼の言葉を思い出した。
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