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部屋に戻ると、ふと、テーブルの上の携帯が光っているのが目に入った。
あ......私、昨日から携帯置きっぱなし......
テーブルに歩み寄り、そっと取り上げる。
ランプの点滅の色は、不在着信を表していた。
え......もしかして......
条件反射のように、私の頭に祐ちゃんの顔が浮かんでしまう。
あの日から、今日で一週間。
自宅に湿布を届けた形跡はあったものの、彼からの連絡がこれまでに一度もない事に、私はホッとすると共に、モヤモヤした気持ちを抱えていた。
なに、考えてるんだろ、祐ちゃん......
また連絡する、って言ったはずなのに......どうして何も言って来ないんだろ......
少し躊躇しながらも、ゆっくりと履歴を確認する。
昨夜のうちに、2件あった着信。
それは、どちらも『非通知』だった。
......また?
先日も見たその文字に、着信の相手に考えを巡らせる。
祐ちゃんだったら、やっぱり非通知でかけてくるのは、考えられないし......
梨花なわけもないし......
それ以外に、誰が......
......え?
一瞬ハッキリと顔が浮かんだ相手を、
そんなわけ、ないか......
私はすぐに、頭の中で否定した。
お母さんが......電話なんか、かけてくるはずがない。
これまでの数ヶ月の間、自宅にお金を届ける際、私を避けるように、私が不在の時間を狙って足を運んでいた母。
そんな母が、今さら私に連絡をしてくる理由など、あるわけがなかった。
そっと画面を消し、携帯を握り締める。
やっぱり、祐ちゃんかな......
というか......私、祐ちゃんと、ちゃんと話した方がいいんじゃ......
じゃないと、私、いつまで経っても......
さっきまで一緒にいた吉岡くんの顔が頭に浮かび、胸の奥が苦しくなる。
思い切って、連絡してみようかな......
祐ちゃん、ちゃんと話聞いてくれるかな......
未だガーゼを剥がす事のできない左頬に、突然鈍い痛みを感じながら......私は、重い気持ちのまま、そっとテーブルの上に携帯を戻した。
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