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「あ、明日、は、あの......」
「え?なんか都合悪いの?」
「あ、あの、都合、というか......」
口ごもる私を、梨花がキョトンと見つめる。
だ、だって私、今、吉岡くんの家に住んでて......
......とは絶対言えなかった私に、
「てかさ、吉岡の希望も聞こうよ」
梨花が、ミートボールをパクリと食べながら言った。
「......希望?」
「うん、前言ってたじゃん吉岡。次は、俺にリクエストさせて?って」
「......あ......」
初めて4人でうちに集まった時、帰り際、吉岡くんが言った言葉。
楽しかったあの日をぼんやりと思い出していると、久しぶりに自分のお弁当をモグモグしていた梨花は、
「私、あの時ちょっと感激しちゃったんだよね。吉岡ってば、尚のこと、友達としてちゃんと大事に思ってくれてるんだなー、って。あいつ、見かけによらずいいとこあるよね」
見かけによらず?
ちょっぴり突っ込みたくなる部分はあったものの、梨花の言葉に、私は遠くの彼にチラリと視線を向けた。
吉岡くん、なにリクエストするのかな......
また、唐揚げと卵焼き、って言ったりして。
想像しながら、ふふっと笑ってしまう。
モクモクとお弁当を食べている彼を見つめていると、
「てか尚、さっきからなにニヤニヤしてんの?」
隣りから、梨花の呆れた声が聞こえた。
「えっ?」
「なんか今日の尚、いつもに増して変だよ?」
「......」
再び突っ込みたくなりながら、グッと堪える。
「祐也くんと何かいい事でもあった?」
「......な、なにも......」
「ふーん......」
自分から聞いておきながら、興味がなさそうに紙パックの牛乳に手を伸ばした梨花は、
「てかさ、1時にスーパー集合で決定ね?」
勝手に決定し、ちゅーっと牛乳を吸い上げた。
え......ど、どうしたら......
こっそり再び吉岡くんに目を戻す。
吉岡くんは、箸で摘んだナスに、怪訝な表情を向けていた。
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