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え、食べるのかな。 ジッとナスと睨めっこをしている彼に、目が釘付けになる。 意を決したように、小さく息を吐き出した吉岡くんは、ナスを摘んでいた箸を、ゆっくりと口元に近付けた。 あ......ホントに食べるんだ...... と思った瞬間、 あ...... 隣りの石田くんが、パクリとそれを横取りした。 空になった箸先を見つめ、目をパチパチしている吉岡くん。 ニコニコしながらモグモグしている石田くんに、不意にムッとした顔を向けた吉岡くんは、突然石田くんの頭をベシッと叩いた。 「いってぇー!吉岡が殴ったぁー!」 クラスの中に、石田くんの大袈裟な声が響き渡る。 「なんだよっ、なんでいきなり殴るんだよっ!」 「......」 「え?つーかナス?ナス食ったから?だってナスは俺の担当だろっ?」 「......」 大きな声でわめき続ける石田くんを完全に無視していた吉岡くんは、ムッとしたまま、パクリと卵焼きを口に入れた。 おもしろい、あの二人。 再び頬を緩めていた私の横から、 「全く......なにしてんの?あの二人」 梨花のため息混じりの声が聞こえる。 「ホントだよね......」 私は、嫌いなナスを頑張って食べてくれようとした吉岡くんに、ちょっぴりキュンとしながら、机の上のお弁当にそっと顔を戻した。 「ねぇ尚」 「うん?」 「この席、明日で終わりだね」 「え?」 ナスを摘みながら、ふと彼女に顔を向ける。 「2学期になったらさ、席替えあるじゃん?尚、一番後ろの席じゃなくなるねっ?」 ニヤリと私を覗き込んでいた梨花は、 「私もやっと一番前の席から解放されるしっ。長かったー、1学期」 箸を持ったまま、グイッと伸びをした。 あ......そっか...... 吉岡くんの隣りの席に座っていられるのが明日で最後だと気付いた私の胸が、突然チクリと痛む。 やだな、席替え...... ずっと、このままの席がいいのに...... シュンとしながらナスを見つめていると、 「でも、石田と席離れちゃうのは、ちょっと寂しいけどさぁ......」 梨花は、不意に私の肩越しをジッと見つめた。 .
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