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「てかさ、夏休み、また祐也くんちで過ごすの?春休みはほぼ毎日通ってたよね?」
「......祐ちゃん......忙しいから......」
「え、祐也くん今、大学3年でしょ?もう就職活動とかしてんの?」
「......わかんない、けど......」
「は?彼氏のことくらいちゃんと把握しておきなさいよっ。いつも頼ってるばっかりじゃなくて、そろそろ尚も、ちゃんと祐也くんのこと支えてあげないとダメじゃんっ」
「......うん......」
嘘ばかりを重ねる私の胸が、まるで何かに突き刺されたかのように、ズキンと痛む。
今......本当の事を話したら、梨花はどんな反応を示すだろう。
......長い間、嘘をついてきた私を、激しく責めるだろうか。
それとも、私を心配し、悲しそうに、その顔を歪めるだろうか。
フーフーしながら唐揚げをつまみ食いする梨花を見つめていた私は、
......ダメだ、言えない。
そっと自分の手元に目線を戻した。
ちゃんと別れてからじゃないと......何もかも、過去の事にしてからじゃないと......梨花に、ますます心配かけちゃう。
......ごめん、梨花......
小さくため息をついた私の後ろから、
「できた?」
不意に、柔らかい声が聞こえた。
「あ、吉岡くん」
くるりと振り向くと、
「俺、メチャメチャお腹すいた......あれ?おにぎり?」
私の手元に目を落とし、不思議そうな顔をする彼。
「うん......白いご飯じゃ、寂しいかと思って......嫌?」
「嫌なわけないだろ?中身、何?」
吉岡くんは、にこりと微笑んだ。
彼の優しい顔に、一気に私の心が癒やされる。
「えっと......梅干しと、ツナ缶しかなくて......」
「うん、どっちでもいい」
「あ、じゃあ......」
「あ、でも石田のは梅干しにして?」
吉岡くんの声に、コンロの火を止めた梨花が、突然プッと吹き出した。
「え?なに?梨花」
「へ?ううん、なんでもないっ。そう言えば石田って、梅干しのおにぎり大好物なんだよねっ?吉岡っ?」
「うん」
スッと腕を伸ばし、梅干しを摘む吉岡くん。
そうなんだ......
「わかった。すぐできるから、もうちょっとだけ待ってて?」
私は、梨花と同じく、パクリと梅干しをつまみ食いする彼の隣りで、せっせと梅干し入りのおにぎりを握った。
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