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な、なに、言うかな......
ピキリと固まる私の前で、
「同じ味?」
「は?吉岡ってば何言ってんの?」
ポカンとする石田くんと梨花。
私は、動揺しながらも、
「す、すごーいっ!同じ味付けなんて、ものすごい偶然だねっ」
慌てて声を上げた。
「うちの母さんと相澤、唐揚げの作り方一緒なんだな」
白々しく話す彼にイラッとしながら、
「そっ、そうなんだねっ。あっ!ざ、雑誌......あ、テレビで、美味しい唐揚げの作り方、やってたもんね、この前っ。偶然同じ番組見てたんだねっ。ね?梨花っ?」
あたふたと言葉を並べる。
「......え?......うん......」
梨花は、どこか腑に落ちない表情ながらも、小さく頷いた。
「そうなんだ。ホントすごい偶然だな......あ、おにぎり頂き」
涼しい顔でお皿に手を伸ばす吉岡くん。
バ、バレたらどうするのっ!?
吉岡くんのバカっ!
私は、梨花と石田くんに見えないテーブルの下で、隣りの彼の膝をペシッと叩いた。
「ん?なに?」
「え?な、なにが?」
とぼける彼にへらりと笑顔を向け、
「あ、い、石田くんも、どうぞ?」
おにぎりを乗せた大皿をズイッと差し出す。
「おっ、サンキュ」
ヒョイと摘み上げた石田くんは、
「いっただっきまーす!」
大きな口でおにぎりにかぶりつき、モグモグした瞬間、ハッとしたように目を丸くした。
「え......どうした......」
「うわぁーっ!!」
「えっ?」
キョトンとする私の前で、慌ててコップに手を伸ばす石田くん。
ゴクゴクと勢い良くお茶を飲み干した彼は、
「なにすんだよっ!」
隣りでケタケタ笑っている梨花を、なぜかちょっぴり涙目で睨んだ。
「私じゃないもーん、おにぎり作ったのは尚だもーん」
「広瀬、おまっ、なんで梅干し入れるんだよっ!」
「え?あ、あの......え?」
石田くんに睨まれ、訳がわからないまま隣りに目を向けると、吉岡くんは、肩を震わせながら、クスクスと笑っている。
え、なに?
「あ、あの、い、石田くん、梅干し入りのおにぎり、大好物って......」
「言ってねーよそんな事っ!」
「え、だ、だって、二人が......」
説明しようとした私の横から、
「もう......石田は梅干しが苦手だって教えたのに......ひどいな、広瀬」
吉岡くんの、信じられない言葉が聞こえた。
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