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「......なに、言って......」 「お前、石田に嫌がらせするなよ」 「そうだよっ。尚ってば、人の彼氏いじめないでくれるっ?」 「......」 ......あ、あり得ない、この二人。 タッグを組み、私を騙した二人を前に、沸々と怒りが沸いてくる。 「ひっ、ひどいっ!二人共っ!」 思い切り頬を膨らませた私に、未だちょっぴり涙目の石田くんは、 「つーかひどいのはお前だっ!広瀬っ!」 ジロリと私を睨み付けた。 「ち、違っ、だって......」 「だってじゃねーよっ、俺を殺す気かっ!」 石田くんに勘違いされ、なんだか彼にまで怒りが沸いてくる。 「う、梅干し食べたくらいで死ぬわけないじゃないっ」 私は、ムッと石田くんを睨み返した。 「死ぬかもしれねーだろっ!?俺は梅干しがこの世で一番大っ嫌いなんだよっ!」 「し、知らないよっ、そんなのっ」 「あっ!お前とぼけてんじゃねーよっ!吉岡に聞いてたくせにっ!」 「だっ、だから、それは違う、って......」 「何がどう違うんだよっ!」 「だ、だからっ......」 必死に弁解しようとしていた私の横で、 「はいそこ、喧嘩しない」 吉岡くんが、無責任な発言をする。 なっ......そ、そもそも、誰のせいだと思って...... 怒りのあまり、プルプルと拳を震わせていた私に、 「......てかさぁ、やっぱ尚、何かあったでしょ」 梨花が、不意にジッと私を見つめた。 「え?何か?」 私の代わりに、梨花にキョトンと目を向ける吉岡くん。 ソファーに座ったまま、身を乗り出した梨花は、 「やっぱりさぁ、尚、今までとなんか違うもん。ホントは何か、祐也くんといい事あったんじゃない?」 探るように私を見つめた。 「え?......っと......」 だから、祐ちゃんとは、何もいい事ないけど...... 思わず顔を伏せながら、最近あった身の回りの変化を思い浮かべる。 数日前から、吉岡くんの家に、お世話になっている事。 吉岡くんと、朝も夜も、一緒にいる事。 吉岡くんと、キスを交わした事。 吉岡くんと、同じベットで一夜を過ごした事。 「あの......」 梨花が言う『いい事』の答えに、吉岡くん絡みの事しか浮かんで来ず、口ごもる私の隣りで、 「あ、俺、広瀬の小学校のアルバム見たい」 吉岡くんが、突拍子もなく口を開いた。 .
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