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「......アルバム?」
「うん。持って来て?」
涼しい顔でお味噌汁を啜る彼の隣りで、少し戸惑ってしまう。
「......え、あの......」
「あっ、私もまた見たいっ!小学生の尚、超かわいいよっ?周りよりちっちゃくてさ、運動着ダボダボなのっ」
「マジでっ?どんだけちっちゃかったんだよ、広瀬っ」
「......」
え、今、もしかして吉岡くん、私が困ってたから、助けてくれたのかな......
それとも、祐ちゃんの話が出たから、話題変えたかったのかな......
隣りに座る彼の心の中に、考えを働かせていると、
「もしかして広瀬、背の順、常に一番前だったタイプ?」
石田くんが、ニヤリと私を覗き込んだ。
「ちっ、違うもんっ。3番目だったもんっ」
慌てて否定しながら、再び彼を睨み付ける。
「3番目?やっぱ昔からチビだったんだなっ、広瀬っ」
「なっ......チ、チビって......」
「前から3番目は明らかにチビだろ?」
「ち、違うもんっ!チビじゃないもんっ!チビって言うのは、一番前の人のこと言うんだもんっ!3番目の人のことは、チビって言わないんだもんっ!それに私、あの頃よりっ......」
「わかったから」
ムキになって言い返していた私は、吉岡くんの声に、ピタリと言葉を止めた。
「っていうか、一番前も3番目も変わらないから。ほら、早くアルバム持って来る」
「......あ......うん」
彼に急かされ、なんだか納得できないままも、渋々立ち上がる。
リビングの扉に向かって足を踏み出した私は、
「なんか......変」
梨花の声に、くるりと振り返った。
「え?変?私?」
「うん......てか、尚さぁ......」
「......うん?」
腕組みをし、ジッと私を見据えている梨花を、キョトンと見つめ返す。
真面目な顔で、何かを考えるようにしていた梨花は、チラリと吉岡くんに目を向けた後、
「......あっ、ううん、なんでもないっ」
急にニコッと微笑んだ。
「......え?」
慌てて笑顔を作る梨花に、ちょっぴり首を傾げる。
「ほら尚っ、アルバム持って来てよっ」
「......え、あの......」
「ほら早くっ」
「......あ、うん......」
私は、彼女の様子を不思議に思いながらも、再び背を向け、2階の自室へと向かった。
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