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「ありがとう」
私から桃のカクテルを受け取った絵里さんが、プルタブを開け、淡いピンク色の缶を口に運ぶ。
艶々な口元と、細い指先の爪に目立つ、ピンクとシルバーのラインストーン。
淡いピンク色の缶は、いつもながら、妖艶な彼女に似合っている気がした。
「前から思ってたんだけど......」
「......あっ、はい」
彼女に見とれていた私は、慌てて視線をずらした。
「尚ちゃんのご両親......心配しないの?こんな時間まで娘が出歩いて」
「......えっ......あ、の......」
突然の問い掛けに、私の心臓の動きが急に速まる。
「まだ高校生なわけだし......ずっと気になってたのよね。
それに、いつもお酒とかたくさん買ってくるし......そのお金も、どうしてるのかな、って......」
心配そうに目線を落とした絵里さんは、ピンクの缶をそっとテーブルに置くと、細いタバコに火を点けた。
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