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左肩にかけた鞄の中から、自宅の鍵を探していると『広瀬』と書かれた銀色のポストに、茶色の封筒が挟まっているのが見えた。
切手の貼られていない......宛名と住所さえも書かれていない茶封筒は、必ず平日の昼間に届く。
......来たんだ。
封筒をポストから引き抜き、玄関の鍵を開けた私は、止まった空気が漂う中へと足を踏み入れる。
いつもながら、白いサンダルとスニーカーが二足だけ並ぶ玄関は、この広い空間にはなんだか不釣り合いだな、と思う。
靴を脱ぎ、真っ直ぐ2階の自室に向かい部屋の窓を開けると、生ぬるい風が少しだけ入ってきた。
勉強机のペン立ての中から、幼稚園で使っていた頃の黄色いハサミを手に取る。
持ち手がパンダの絵柄に見立ててあるそれは、黒く塗られた目の部分が色褪せ、かわいそうな顔になっていた。
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