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「いつも思うけどさー、やっぱいいよっ、尚の家」
「え?なにが?」
リビングから続くキッチンでベーコンを切っていた私は、梨花に背を向けたまま答えた。
「おしゃれだし......ほら!テレビも大きいしさっ、なんか高そうなグラスとか飾ってるし、うらやましいよ、うんっ」
「そんな事ないけど......」
一人でいるには無駄に広すぎる家を無理矢理褒めた梨花が、トサッとソファーに座る音が聞こえる。
黒い革製の三人掛けソファーの真ん中。
その場所は、たまに来る梨花の定位置だった。
「もうすぐ出来るから、テレビでも見て待ってて?」
チラッと後ろを振り返ると、
「あ、じゃあ久しぶりにおじさんに挨拶してもいい?」
ギシッと立ち上がった梨花は、リビングの奥の狭い畳の間に、小走りで向かった。
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