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私が手を止め梨花の元に向かうと、彼女は、座布団の上に正座をし、ピタッとくっつけた両手を鼻に押し当て、目を瞑っていた。
たまに来る梨花は、こうやって、今では私以外話しかける人がいなくなった父に、手を合わせてくれる。
......パパ、良かったね、かわいい女の子とお話できて。
私は、いつまでも若いままの父に、そっと心の中で囁いた。
しばらくすると、ゆっくりと目を開け、両手を下ろす梨花。
「ごめんね、ロウソクも何も用意しなくて......ありがとうね」
彼女の横顔に声を掛ける。
「やっぱ......目が似てるね、尚」
私の言葉に答える事なく......梨花は、遺影を見つめたまま、いつになくしんみりと呟いた。
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