1572人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「尚ーっ、鳴ってるよー、携帯っ」
ソファーでテレビを見ながら寛いでいた梨花に呼ばれ、私は、慌てて泡まみれの手を水で流した。
急いでリビングに向かい、ローテーブルに置いたままの携帯を手に取る。
着信は、私の予想を反して、祐ちゃんではなく......先日番号を交換したばかりの、絵里さんだった。
もし着信の相手が祐ちゃんで、私が彼に呼ばれたら、せっかく来てくれている梨花に、このまま帰ってもらわないといけない。
私は、少しホッとしながら、通話ボタンを押した。
『もしもし尚ちゃん?』
「絵里さん、こんばんは」
チラッと時計を見ると、午後8時を少し過ぎている。
『ごめんね、急に。別に用はないんだけど......せっかく番号交換したのに、尚ちゃん全くかけてくれないから、こっちから電話しちゃった』
私は、絵里さんのその甘い声を聞きながら、キッチンの方へと戻った。
.
最初のコメントを投稿しよう!