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チリン、という音に後ろを振り向くと、私と同じ制服を着た女子生徒が、すぐそこまで迫っていた。
「あ、すみませ......」
ぼんやりと歩いていた私は、咄嗟にフェンス脇に足を踏み出し、身体を横に向けた。
ぺこりと頭を下げた彼女が風を切って通り抜けると、ふわりと心地良いシャンプーの匂いがする。
手元の腕時計を見ると、いつもより、だいぶ遅い時間だった。
彼女の背中を見送り、再び重い足を踏み出す。
深夜に家に戻り、一睡もできなかった私の頭の中は、色んな感情でグチャグチャだった。
疑惑と、不安と......切なさと、悔しさと、情けなさと......
考えても混乱するばかりの感情は、未だ私の頭の中をかき乱す。
「ほら急げー!」
校門に立っている先生の声が、遠くから聞こえた。
気持ち、切り替えなきゃ......
私は、小さくため息をつき、校門に向かって走った。
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